お財布.com

最終話『吾輩は、』

すぐに逃げようとしたのだが逃げ場が無い。
どうするべきかと考える間もなく野良犬は襲いかかってきた。
喉元に噛み付こうと狙っている。
だが、吾輩が身を交わした為に背中に噛み付かれる形となった。
そのまま吾輩を引きずり回した後、野良犬は吾輩から離れ、再度、喉元を狙ってきた。
今回も何とか身を交わしたのだが肩の辺りを噛まれた。
しかし、すぐに野良犬は吾輩から離れ、再度、喉元を狙ってきた。
どうやら本気で吾輩を殺すつもりのようだ。

しかし今回は上手く交わす事が出来た。
しかも野良犬は、一瞬吾輩を見失ったようだ。

逃げるなら今しかない。
先程噛まれた所からはかなりの血が流れている。
次にやられたらまずい。

吾輩は必死で走った。
野良犬も追いかけてきた。
途中、1人の人間とすれ違った。
どこかで会った事がある様な気もしたが今はそれどころではない。

野良犬は、しばらく追いかけて来たのだが途中で引き返して行った。
腹が減っていたのであろうか。
兎に角助かった。
このまま追いかけてこられていたなら捕まっていたであろう。
しかし安心した途端、先程の傷の痛みが気になってきた。
かなり痛む。
これはまずいかもしれない。

とりあえずどこかで休む事にしよう。
誰も居ないところへ行こう。

とぼとぼ歩いた。

歩いているうちに体がだるくなってきた。

怪我だけでなく、腹が減っていることも原因であろう。

もう歩くことが辛くなってきた。

この辺で休む事にしよう。

意識も遠のいてきた。




もう......駄目かもしれない。




.........。



何がいけなかったのであろうか。


吾輩は何か悪いことをしたのであろうか。






.........。

 

 




吾輩は野良猫になれたのであろうか。


















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第十一話『窮地』

「ところで、女将さん.....あの餌なんですけど.......」
「なんだい?」
「もうそろそろ諦めましょうよ。餌を置いてても、あの野良猫が来るだけですよ」
「うーん............ほら、休憩終わりの時間だよっ!!仕事、仕事!!」

人間達は一斉にガタガタと片づけを始めた。
このままでは見つかってしまうので立ち去る事にした。
どうにか見つからずに立ち去ることが出来た。

翌日。
いつもの場所に餌が無かった。

どうしたのであろうか。
昨日、厨房に侵入した事に気付かれたのであろうか。
もしかしたら忘れているだけかもしれない。
今日は諦める事にしよう。

しかし、次の日も餌が無かった。
どうしたのであろうか。
だが無いものは仕方がない。
兎に角、何かを喰わなければ腹が減って死にそうだ。
とりあえずは他の餌を探しに行くしかなさそうである。
何とか少量の餌と水にありつけたが、満腹にはほど遠い。

やはり、ここの餌が無いと辛い。

しかし、次の日も、その次の日も餌は無かった。
どうやら忘れているのではなく、餌を置く事を止めたのかもしれない。
もうここの餌を頼らずに生きていかなければならないようである。
やはり餌の心配をしながら生きてゆかなくてはいけなくなってしまった。
あの旅館の餌が無くなって以来、ろくなモノを食べていない。
やはり吾輩も野良猫らしく餌の奪い合いなどをして生き延びるしか無くなった。

出来る、出来ない、向き、不向きは関係ない。
やらなければ飢え死にするだけである。
以前の様に、他の野良猫や野良犬との争いを避けていたのでは満足に喰うことは出来ない。
吾輩は争いを避ける事を止める事にした。

と言っても逃げるタイミングを遅らせるのがやっとであった。
以前は、吾輩が餌を食っているときに敵が来たならば、まだお互いの距離が離れているうちに餌を置いて逃げていた。そして今は、敵が近くまで来てから少しだけ餌をくわえて逃げるようになった。
けっして全部は持っていかず少しは残して逃げた。
これにより、敵が吾輩を追ってくる危険性が減るからである。
しかし、それでも吾輩を追ってくる輩はいた。
そんな時は喧嘩になった。
そして吾輩は負けた。
喧嘩の後は、無意識のうちに旅館に向かっていた。何故なのかは良く分からない。
しかし、いつ行っても餌は無かった。

あの旅館の餌が無くなってから二月程が経過した。

何とか生き延びてはいるが、体は傷だらけになった。
あまり食べていない所為であろうか、どうも体調がおかしい。
最近、あの旅館には行かなくなった。餌が無いからである。

ここ数日、ろくに食べていなかったのであるが今日はついているらしい。
大量の餌を発見した。
どうやらここは食べ物屋のごみ置き場の様だ。
食べ物が山ほど捨ててある。
腹が減っていた吾輩は夢中で食べていた。

すると、突然、後ろから唸り声が聞こえてきた。

振り向くと、怒った野良犬がすぐ後ろに居た。
どうやらここは、この犬の縄張りの様である。

すぐに逃げようとしたのだが逃げ場が無い。





続く→最終話『吾輩は、』

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第十話『潜入』

女将が「積んでれ」で有ることが判明してから一月程経った
初めて女将と会ってから二月程経ったのである。

この間、ここに来る頻度が多くなった。
以前は2,3日に一度であったが、最近はほぼ毎日である。
上手い具合に餌にありつけた日は来なかったりもしたが、そんな日は滅多にない。
それに以前よりも無理をしなくなった。
餌を見つけたとしても、少しでも危険を感じた際は速やかにあきらめ、この家に来るようになった。
当然であろう。
安全な餌場があるのに危険を冒してまで餌を争う必要など全くない。
吾輩はそんな馬鹿ではない。

それにしても、女将は一向に優しくならない。
今は、ここに来れば必ず餌にありつける。
しかし、このままではちゃんと飼ってもらえないかもしれない。
最近、不安になってきた事がある。

それは『いつまでこの餌はあるのであろうか。』

と言うことである。
と言うのも、最近、一つ気になる点がある。
それは、『臭い』である。
元々この家に有った猫の臭いが薄くなってきている。
臭いもそうであるが、臭いの主である猫に会ったことがない。
2ヶ月も通っていて会わないと言うのもおかしな話である。
どういう事であろうか。

今の状況からすれば、吾輩の為の餌としか言えない。
しかし、本来はそうでないと言う事に吾輩も気付いていた。
おそらく女将が正式に吾輩を飼ってくれない原因もそこにあるのであろう。

その原因が何であるのかは皆目検討がつかない。
だが、その原因を知っておいた方が良さそうな気がした。

上手い具合に今日は奥の扉が少し開いている。
今までにも、何度かこの扉を開けようと挑戦したのであるが全く開かなかった。
だが、人間達がここに出入りする際に隙間から覗いた事が有るので、奥がどうなっているかは知っている。
人間が自分たちの餌を作るための「厨房」と言う場所である。
人間達の餌が沢山置いてあるところだ。
前の飼い主に飼われていたときに、人間の餌に手を出したことがあるがあるのだが、その時はきつく叱られた。人間も我々と同じく、餌は大事なのであろう。
下手に人間を怒らせてしまうと、今後、餌をくれなくなってしまうかもしれない。

人間の餌には手を出さぬよう気を付ける事にした。
だが人間達は、吾輩が餌を奪いに来たと勘違いするかもしれない。
そこで、人間達に見つからぬよう、極力音を立てないように潜入した。

中には3,4人の人間が居たが、やはり猫の姿も臭いも無かった。
人間達は輪になり熱い水を飲んで色々とお喋りをしていた。
吾輩には気付いてない様子である。

しばらくは、うちの子が云々やら、旦那が云々と話していたのだが、ついにあの餌の話が始まった。
「ところで、女将さん.....あの餌なんですけど.......」





続く→第十一話『窮地』

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第九話『積んで』

「女将さん。この猫どうしましょうか?追い払います?」
問いかけられると女将さんと呼ばれた人間が近づいてきた。
一瞬、逃げようかとも考えたのだが殺意みたいなものを感じなかったのでその場に留まった。

その人間は吾輩のすぐ近くまで来ると「あっちへ行け」と言いながら手を振り、吾輩を追い払うポーズをしたのであるが、ちっとも恐くなかった。

「出ていかないねえ、この猫。まあ別に構わないよ、見かけた時にこうやっていればそのうち来なくなるさ」
そう言い残し2人とも奥へと戻って行った。

2人が居なくなってから満腹になるまで餌を喰った事は言うまでもないであろう。

次の日以降も食い物が見つからず腹が減った時にはこの家を訪れた。
ここには必ず餌がある。
しかも昼寝も出来る。
しばらく通ううちに分かったのであるが、どうやらこの家は旅館と言う所らしい。

もちろん女将やその子分達に出くわす事もあった。
だが、女将は手を振り「出ていけ」と脅すぐらいであった。
痛くないし、恐くもないから吾輩は逃げなかった。
子分達の場合には吾輩を見ても何もしない。
夜間はこの扉が閉まっている為、入る事が出来ない。
扉を閉める段階で吾輩が家の中に居る時だけは、出ていくまでしつこく追い払われる。
昼間に閉まっている事も有ったが、殆どの日は開いている。

もしかすると、吾輩は変則的ではあるものの外飼いをされているのではなかろうか。
だとすると、終の棲家を見つけたのかもしれない。
今は昼間しか居させてくれないのであるが、そのうち夜間も家に居させてくれるかもしれない。

初めて女将と会ってから一月程経ったのであるが、女将の態度はまるで変わらない。
相変わらず、吾輩を見る度「ほら、出て行け」と言い、一向に優しくなる気配が無い。
実に素っ気ない。
だが、餌はくれる。
扉を閉めきらず、吾輩が出入りしやすいようにしている。
もしや照れているのであろうか。

吾輩はある事を思い出した。

人間の雌には色々な種族がいるらしい。
前の飼い主がいつも箱の前で呪文の様に呟いていた。
「積んでれ、萌ええ」と。

前の飼い主は吾輩に「積んでれ」の素晴らしさを力説する事があった。
この「積んでれ」と言う種族は、初めは冷たい態度で接するのであるが、ある日突然優しさを見せるらしい。
おそらくこの女将も「積んでれ」なのであろう。
もう少し経てばきっと突然優しくなり、完全に吾輩を飼ってくれるであろう。







続く→第十話『潜入』

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第八話『女将』

吾輩は死ぬほど腹が減っている。
そして、網戸の先には餌がある。
これを喰わない手はない。
網戸に手をかけてみるとあっさりと開いた。
中に入ろうとしたのだが、一歩踏み込んだ所で躊躇してしまった。

この間の白猫の一件以来、少しだけ人間が恐くなったからである。
前の主人に飼われていた時は、あの家の人間以外と接した経験が殆どなかった。
たまに連れてくる人間も吾輩に乱暴をする人間などいなかった。
捨てられてから会った人間の中でも、あんなに恐ろしい人間は白猫の飼い主だけであった。
何故、石を投げつけられたのであろうか?
やはり考えられるのは餌しかない。

この餌もきっとこの家で飼われている猫の為の物であろう。
当然かもしれないが、この家は他の猫の臭いがする。
この餌を食べると、奥からこの家の主が現れ、吾輩を放り出すかもしれない。
放り出すだけならまだ良い。
この間の様に石を投げつけて来るかもしれないし、それ以上の事をされるかもしれない。
最悪、殺されるかもしれない。
とにかく恐ろしかった。

だが腹が減って死にそうだ。
ここで喰わなければ飢え死にするかもしれない。
それならばということで、勇気を出して中に入って餌を食べる事にした。

まあまあ旨い。
食べながら気配を伺ったが、どうも人が来る気配はない。
大丈夫そうである。
結局、満腹になるまで食べた。
その間、誰も来なかった。
食後はゆっくりしたかったのであるが、いつ人間が来るかも分からない。
危険なので早々に立ち去ることにした。
また今度、腹が減ってしょうがない時は来ることにしよう。

そして、翌日。
食べ物を探し歩いたが口にしたのはほんの少しの食べ物と水だけであった。

そして、その翌日。
またこの家に来てしまった。
やはり同じ所に餌がある。
しかも、先日は殆ど食べてしまったのであるが、今日はまた一杯になっている。
吾輩の為に補充したのであろうか?
まあそんなことはどうでも良いのでとにかく食べた。
今日も、人間を見ることはなかった。
ついでに猫も見なかった。

そんな感じで、2,3日に一度、この家の餌を食べに来ていた。
そして、最初に餌を食べた日から10日ほど経った頃であった。

今日もあの家で餌を食べていたのであるが、突然、奥から2人の人間が現れた。
眼があった時から、ずっと睨み合っていたのであるが、少し経った後、片方の人間がもう片方に向かってこう話した。
「女将さん。この猫どうしましょうか?追い払います?」





続く→第九話『積んで』

第七話『網戸の先』

白猫の家に行った日から数日が経った。
あれ以来、白猫を見かけない。
どうしたのであろうか。

あの日、吾輩を連れ帰ったが為に、主人に怒られたのであろうか。
そして外出を禁じられたのではなかろうか。
もしそうならば吾輩の所為ではないか。

白猫に会いたくなってきた。
吾輩の所為で外出が出来ないのであれば一言あやまっておきたい。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか白猫の家に着いていた。

あの日、白猫が入っていった入り口に行ってみたが開かない。
家の周りをぐるっと廻って調べてみたがどこからも入れなかった。
やはり吾輩の予想通りであった。
白猫は外出を禁じられたのであろう。

もう一度、家の周りをぐるっと廻ってみた。
今度は中の様子を伺うためである。
しかし、白猫は見つからなかった。
それどころか、あの白猫の主人に見つかってしまった。
主人は吾輩を見つけるや否や、外に飛び出してきた。
そして、そこら辺に落ちていた石ころを拾い上げると、吾輩に投げつけてきた。
石ころは、見事に吾輩の脇腹に命中した。
主人はさらに石ころを投げつけてきた。

吾輩は夢中で逃げた。

幸い他の石には当たらずに済んだ。

それにしても、あんな恐ろしい人間は初めてである。
あの白猫は大丈夫であろうか。
心配だが、今度あの家に行けば殺されるかもしれない。
それにあの女子高校生が居るから大丈夫であろう。
しばらくは近づかない方が良さそうである。

しかし困った。

やはり餌の心配をしながら生きてゆかなくてはいけなくなってしまった。
ここ数日、ろくなモノを食べていない。
やはり吾輩も野良猫らしく餌の奪い合いなどをして生き延びなければならないのであろうか。
果たして吾輩に、他の野良猫の様な真似が出来るのであろうか。
食い物の集まる所には、既に縄張りにしている猫が居る。
生きていく為には彼らと戦い、そして勝利し、餌場を確保しなければいけない。
確保した所で他の猫から守らなければならない。
しかも相手は猫だけではない。
犬や烏も相手である。
どうも自信がない。

そもそも吾輩は野良猫と言えるのであろか。
元々、吾輩は飼い猫であった。
だが捨てられた。
捨てられたその時は捨て猫である。
しかし、今、吾輩は捨て猫なのであろうか。
捨て猫はどのようにして生きていけば良いのであろうか。
人間に飼ってもらえば問題ないが、飼ってもらえなければどうすれば良いのであろうか。
やはり野良猫になるしか道は無いのであろうか。
もう既に吾輩は野良猫なのであろうか。

そんなことを考えつつ、とぼとぼ歩いた。
どれぐらい歩いたかわからないが、いつの間にか見知らぬ所にいた。
別に帰るところがあるわけでもない。
今はその帰る所を探しているのではないか。
見知らぬ所が永住の地になればそれで良いのである。

とにかく餌を求めて歩き続けた。
しばらく歩いていると餌の臭いがした。
さっそく行ってみると、ある家に辿り着いた。
さらに臭いを辿っていくと、網戸の先に餌が置いてあるのを見つけた。






続く→第八話『女将』

第六話『女子高校生』

白猫が呼んできた人間は吾輩に向かって歩いて来ている。
これは間違いなく好機である。
以前飼われていた時に身につけた、人間が喜ぶ媚びの態度を存分に披露する時が来た。
近寄って来る人間の眼を見てみたが敵意は微塵も感じない。
それどころか吾輩を見て心配そうな顔をしている。
さっそく吾輩は仰向けになり腹を見せる体勢に入った。

しかし、吾輩が動くよりも前にその人間は吾輩を抱え上げ
「可哀想な猫ちゃん。尻尾を怪我してるね。お母さんが帰ってきたら病院に連れて行ってあげる。
 その後、飼ってあげるからね。」
と吾輩に話しかけてきた。

どうやら吾輩は勝ち組になれそうだ。
今日からあの旨い餌が食べ放題で、しかも好きな時に外を歩ける。
そして暖かい寝床まで確保されている。
正にこの世の天国である。

白猫の話によると、この人間は女子高校生と言う種族らしくこの家の主ではないらしい。
この家の主は、今は出かけており、もうすぐ帰ってくるそうだ。
それにしても、この人間のそばに居ると実に居心地が良い。
現に白猫もこの人間に懐いていた。

その後は吾輩と白猫、そしてこの女子高校生とでじゃれ合っていた。
尻尾に薬も付けてくれた。
大分直りかけてはいたものの、化膿していたらしい。
包帯も巻いてくれた。
応急処置であるから後で病院に行くと言っていた。
先程も同じ事を言っていたのだが、この人間の優しさが伝わった。

しばらくすると腹が減って来たので吾輩達2匹で餌を食べた。
もう残りは少なかった為、すぐに無くなってしまった。
それを見た女子高校生がすぐに新しい餌を用意してくれた。
先程とは違う餌である。

旨い。

先程の餌とはまた違った旨さである。
夢中で食べていた時、玄関の扉が開く音がした。
人間が入ってきた。
そしてこちらに向かってきた。
おそらくこの女子高校生の母親であろう。
「お母さん、お帰り。」
と女子高校生が言った。

吾輩を見つけたその母親は無言で吾輩に駆け寄ってきた。
そして吾輩の首筋を掴むと玄関へ向かった。

放り投げられた。

唖然として玄関を見つめているとすぐに女子高校生が出てきた。
が、その後ろから母親が現れ女子高校生を引き戻した。

その後も玄関を見つめていたが、誰も出てこなかった。









続く→第七話『網戸の先』

第五話『白猫の家』

思った通りである。
この白猫、吾輩が近づいて行っても身構えもしないし、逃げようともしない。
どうせなので色々と話を聞いてみた。

まずは吾輩の身の上話をした。
白猫は同情してくれた。
しばらく話し合い、うち解けてきたところで白猫の事も聞き出した。

聞くと、この白猫は「外飼い」をされているらしい。
自由に家の中と外を行き来していると言う。
餌は飼い主が用意してくれるとの事。
だから餌には困っていないそうだ。
今も腹が一杯だと言っている。
何とも羨ましい話である。

外の世界は自由に歩き回れる上、暖かい寝床と餌が備わっている。
猫にとってはこの上ない最高の環境ではなかろうか?
あらゆる猫の中の勝ち組と言っても差し支えないであろう。
是非、吾輩も一緒に住まわせて欲しい。白猫にそう伝てみた。
すると今から飼い主に頼んであげるとの答えであった。
さっそく我々2匹は白猫の家へと向かった。
うまくいけば、いよいよ吾輩も勝ち組である。

2,3分歩くと白猫の家に着いた。
なかなか立派な家である。
きっと良いものが食えるのであろう。
そんな期待を抱きながら白猫に付いて家に入った。
予想通りである。
今まで吾輩が食べたことが無いような旨そうな餌が用意されている。
臭いだけで餌の旨さが充分に分かる。
だが残念なことに、先程腹一杯になったばかりである。
ただ、じーっと餌を眺めていた。
白猫が食べても良いと言ってくれた。
そして白猫は飼い主を呼んでくると言い残し奥へと消えていった。
腹は一杯だがほんの少しなら入らない事もない。
なのでお言葉に甘えて少しだけ食べてみた。

旨い。

こんな旨いものは今まで一度も食べたことがない。
腹が一杯なのでたらふく食えないのが残念で仕方ない。
なんとしてもこの家で飼って貰いたい。そう願った。
せっかくなのでもう一口頂く事にした。

丁度その時、奥の方から人間がやってきた。
白猫が呼んで来たようだ。







続く→第六話『女子高校生』

第四話『白猫』

しばらく走った後、振り向いてみたが奴の姿は無かった。
追って来ていたのかさえ分からぬが奴の臭いはしない。
どうやら助かったようだ。
ホッとしたら尻尾の痛みが気になってきた。
とりあえずはじっとしていたい。

目の前には自動車が有った。
この辺りは他の猫の臭いも殆どない様だ。
とりあえずはこの自動車の下で休む事にした。
自動車の下に入り込んだ後しばらくはじっとしていたが、いつの間にか眠っていた。

どれぐらい眠ったか分からないが頭の上で轟音が鳴り響いたので驚いて飛び起きた。
すぐに車の下から抜け出た。
少し経った後、車は出発していった。
ところでここはどこであろうか?
どうやら、人間の家の庭の様である。
食べられそうなものは無いようであるが、水が有ったのでそれだけ頂いた後、餌探しに出発した。
腹が減ってどうしようもない。

歩き出してみたが、どうも調子がおかしい。歩きにくい。
尻尾が無くなった事が原因であろう。
だが今更何をしようと生えてくるわけでもないので気にしないことにした。
今は少し痛むがそのうち痛みも無くなるであろう。
それに人間共は生まれつき生えていない。
吾輩も別に尻尾が無くなって困ることなど無い。
逆に今後は尻尾を噛まれる心配が無くなったのである。
尻尾が無くなったと言えど良い事しかないではないか。

そう考える事にした。
それに、しばらく歩いているうちにだんだんと慣れてきた。

だが、やはり簡単に餌は見つからないものである。
昨日の公園の前も通ったのだが、あの猫の臭いがするので通り過ぎた。
しばらく歩くとゴミ置き場から食い物の臭いがした。
ここもやはり他の猫の臭いがする。
縄張りにしている猫がいるのであろう。
とは言えそんなことを気にしていては餌にありつけない。
その猫が来る前に食べてしまえばこっちのものである。
さっそくゴミを漁り食べ物を見つけだし食べた。
縄張りにしている主がいつ来るかも分からない。
なるべく急いで食べた。
ある程度食べたところで主が現れた。
主がこっちに向かって走って来たので、吾輩は迷わず逃げた。

吾輩を追ってくるかもしれないので警戒はしていたのだが、主はゴミ捨て場の方へ行きゴミを漁っている。
奴も腹が減っているから当然の選択であろう。
もし全ての食べ物を吾輩が食べてしまっていたならば、腹いせに吾輩を攻撃してきたのであろう。
今後も全ては喰わず、少し残しておけば他の猫が来ても逃げられる。

これが野良猫の処世術と言うものであろう。

だが、まだ満腹にはほど遠い。
この場所は終わりにして、他を探したのだが見つからず。
そして眠くなったので近くにあった家の屋根で昼寝した。
なかなか暖かくて気持ちよかった。



それからの日々は、何とか生きていく為の最低限の餌にはありつけていた。
眠くなればそこら辺に在る家の屋根やら車の上やら下やらで眠った。
しかし、ドンドン痩せていくのは自分でも分かっていた。

そんなある日のこと。
いつもの様に餌を探して歩いていると、幸運な事に、人間が落とした弁当を見つけた。
中身はたっぷりと残っている。鮭もある。
喜び勇んで近寄って行ったのだが横から出てきた白い猫に先を越された。
悔しかったが少し距離を置いたところで眺めていた。
白猫が食べ残したなら頂くつもりであった。

ところが白猫は殆ど食べずに弁当から離れていった。
もちろん吾輩が弁当を頂いた。
久々に満腹になった。
食べ終えた後に気付いたのであるが、さっきの白猫がすぐ近くに座ってこちらを見ていた。
この白猫、今まで会った野良猫とは違い敵対心を感じない。
少し興味が湧いてきたので白猫に近寄ってみた。









続く→第五話『白猫の家』

第三話『逃走』

まだ夜が明けぬうちに起きた。
と言うよりも痛みを感じて飛び起きた。
気付いた時には無意識に便所の床下から逃げ出した後であった。

背中が痛む。
爪で引っ掻かれたのであろう。
どうやら先客の仕業である。
いや先客と言うよりは主と呼ぶべきであろうか。

振り向くと、奴は便所の床下から出てきて吾輩を威嚇している。
真っ黒な猫である。

奴は今にも襲いかかって来そうな気配である。
おそらく縄張りを荒らされた事に対する怒りであろう。
どうするべきなのか?
奴の縄張りであるから吾輩が退くべきなのであろうか?
しかし吾輩とて他に寝床など無いのである。
先程は卑怯なことに吾輩が寝ているところを襲われたのであるが今は違う。
真っ向勝負となれば負ける気がしない。
奴を負かしてしまえばここを吾輩の寝床に出来る。
それに奴は吾輩にビビっているのであろうか、威嚇しつつも出入り口の前からは一歩も動かない。
先程、吾輩が負った傷も大したことは無い。
どうやら奴は大したことなさそうである。
明らかに吾輩の方が強い自信がある。


「勝てる。」

そう思うやいなや、雄叫びとともに奴に向かって飛びかかった。
吾輩が爪を立て奴を引っ掻こうとした瞬間、奴が消えた。
着地したと同時に尻尾に痛みを感じた。
見ると奴が尻尾にかぶりついている。
奴はそのまま吾輩の背中を引っかき回している。

まずい。

このままではどうしようもない。
奴を振り解く為に走ってみたが、尻尾にかぶりついたまま付いてくる。
しかも奴はますます強く噛んできた。
奴は吾輩に合わせて付いては来るものの、脚を踏ん張って抵抗しているので尻尾が千切れそうな程に痛む。

作戦変更である。

吾輩は走るのを止め、直ぐさま奴の顔をめがけて爪を振り下ろした。
しかしその瞬間、今度は奴が走り出した為に空振りになった。
そして吾輩は体勢を崩し仰向けになり引きずられてしまった。
しばらく引きずられはしたものの、脚をバタつかせ形成を立て直そうとした。
やっとの事で地面に脚が着いたが、すぐにまた転んでしまった。
そんなことを3回ほど繰り返し、体勢を立て直した頃には奴は立ち止まっていた。
相変わらず吾輩の尻尾に噛み付いたままである。
今度は吾輩が全速で走って、逆に奴を仰向けにして引きずってやる事にした。
奴も仰向けになれば尻尾を放すであろう。
吾輩は地面に爪を立て全力で走り出そうとしたのだが、同時に奴も別の方向に走り出そうとしていた。
次の瞬間、

「ブチッ」

とイヤな音と同時に尻尾に激痛が走った。
堪らず地面を転げ回っていると、地面に落ちた茶色い尻尾が目に入った。

見覚えがある。
吾輩の尻尾である。

痛みを粉らす為にしばらく転げ回っていたのだが、痛みに慣れてくるに連れあの黒猫の事が気に掛かる。
見ると奴はこちらに飛びかかろうと構えている。
今は痛がっている余裕など無いのである。
何とか痛みに耐えられるぐらいになった頃、吾輩は立ち上がった。
そしてあの黒猫の方をチラッと見た後、すぐに走り出した。

逃げるしかない。
とても奴には敵わない。
兎に角逃げた。

恐い。

このまま戦えば殺される。

何も考えずに逃げた。
奴が追って来ているかどうかも分からない。
兎に角、吾輩はずっと走った。






続く→第四話『白猫』

第二話『食物』


その女の子は吾輩に近づくと顎の下を撫で始めた。
少し気持ちが良い。
次に頭を撫でられた。
前の飼い主も餌を出す前に同じようにしてくれた。
こうされると反射的に仰向けになって目を瞑ってしまう。
最初はこんな事はしなかったのであるがいつの間にか身に付いていた習性である。

しばらくそのままで居たのだが、ふと気が付いて見ると女の子は居ない。
何処へ行ったのであろうか?
辺りを見回してみたが何処にも居ない。

その後もここに居続けたのであるが、誰も吾輩に近寄って来ない。
ニャーニャーと試みた。
鳴き声に誘われこちらに来る子供は居たのだが、先程の女の子と同じく吾輩に触れるだけで行ってしまう。
結局誰も餌をくれようとはしなかった。
そして子供達は居なくなってしまった。

どうしてみんな餌をくれないのであろうか?

そんな事を考える余裕も無い程に腹が減ってきた。
兎に角歩いてみた。
食べ物の臭いを求め歩き続けた。
そのうち夜になった。
しばらく歩いた挙げ句辿り着いたのはゴミ箱であった。
人間の食べ残しを食らうなど癪であったが、そんな事は言ってられぬ。
ゴミ箱に入り残飯を食べた。
弁当の食べ残しである。
少しは腹の足しになった。
結局はゴミを漁るハメになってしまったが、今日のところは運が悪かったと言う事であろう。

ほんの少しではあるが空腹が満たされたところで改めて辺りを見回してみる。
どうやら此処は「公園」という場所の様である。
他のゴミ箱も漁ってみたが食べられそうなものは無かった。
これ以上動き回るとまた腹が減る。
今日はもう寝ることにした。

しかし問題は寝床である。
今まで寝床の事など考えた事も無かった。
好きなときに好きなところで寝ていた。
子供と一緒に寝ることもあればソファやこたつ、兎に角、家中の至る所で寝ていた。
どこであろうと家の中は暖かかった。

だが今は違う。
風も吹いておりとても寒い。
兎に角、雨風のしのげる場所を探した。
意外にすぐ見つかった。
便所の床下だ。

今日はここで寝ることに決めた。
何やら先客が居る様である。
しかし今日はやたらと疲れてしまった。
他の場所を探す気力も体力も残っていない。
先客に気付かれぬ様、そーっと床下に入るとすぐに眠りに就いた。




続く→第三話『逃走』

第一話『吾輩は野良猫になる。』

吾輩は猫である。
名前はまだ無い。
以前、吾輩に名前と餌を与えていた人間もいた。

だが今は名前が無い。

気付いた時には此処に居たのである。
「段ボール」と呼ばれる物体に入っていた。
餌も一所に入っていたのだが、先程全て平らげてしまった。

どうやら今の吾輩は人間どもの言うところの「捨て猫」という状態らしい。
そして今日からは「野良猫」として生きてゆかねばならぬらしい。
「野良猫」という種族は人間の捨てたゴミを漁ったりして生きていると聞いたことがある。
果たして吾輩にその様な野蛮な真似が出来るのであろうか?

しばらく我慢していたのだが腹が減って仕方がなくなってきた。
ここにいても食べるものなど無いので沢山人間が集まる処へ赴いた。



...
(イラスト提供:合歓子様)



いつも建物の中にいるだけなので実に退屈であった。
たまには外の世界を歩いてみたかった。
偶に人間が外の世界に行く時に使う扉が開いている事があった。
そんな時、吾輩は外に出てみたのだがすぐに飼い主に怒られ引き戻されていた。
外の世界を自由に歩く事なんて生まれて初めてかもしれない。
吾輩の長年の夢が叶ったのであろう。

少し歩くと子供が沢山居た。
どうやら此処は小学校と言う処らしい。
子供というものは餌をくれると決まっている。
あの家にも同じぐらいの子供が居たが、よく吾輩に餌を与えてくれたものだった。

ゴミを漁る必要など無いではないか。
餌をくれる人間さえ見つければそんなことをする必要は全くない。
少し頭を使えばそれぐらい考えつきそうなものだ。
きっと他の野良猫共は頭が悪いのであろう。
いやいや、吾輩の頭が良いだけかもしれない。

兎に角、此処でしばらく待ってみる事にした。
子供達の誰かが餌をくれるであろう。

次々と吾輩の前を通り過ぎる子供達。
吾輩に気付かぬ子供。
吾輩を見るだけでそのまま通り過ぎる子供。
吾輩を指さして話し合う子供も居た。

10分程経った頃、1人の女の子が吾輩に近づいて来た。
どうやら作戦成功の様である。


                                      




続く→第二話『食物』


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